アレルゲン管理

HACCPにおけるアレルゲン管理

アレルゲンの管理は、食品事業者であれば以前より必ず実施してきた取り組みですが、近年改めて日本でも海外でも非常に重要視されている問題です。2020年11月に開催されたコーデックス委員会の総会において、HACCPガイドラインの改訂版が採択され、改めてアレルゲン管理の重要性が強調されました。アレルギーを持つ消費者にとっては命に関わる問題の為、HACCPプランを作成するハザード分析では、慎重に吟味しなければならない問題です。

コーデックス委員会が新しい規範を採択したことは、国際的な潮流を鑑みても、非常に重要な動きといえるでしょう。この新しい規範の特徴として、特に強調されているのは、「アレルゲンを含む食品」から「アレルゲンを含まない食品」への意図しない移行、いわゆる交差汚染について強調されています。つまり問題発生後の事後対応ではなく、未然予防のためのアプローチを促進することを目的とした内容となっています。

容器包装された加工食品で表示が義務づけられているアレルギー物質は現在8品目のみで、この8品目を『特定原材料』といいます。

えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、落花生

※2023年3月9日「くるみ」のアレルギー表示が義務化され、特定原材料が7品目から8品目になりました。食品メーカーなどが包装資材の表示切り替えなどで準備するための経過措置は2025年(令和7年)3月31日までとされ、完全施行は2025年(令和7年)4月1日からです。この日から製造・加工・輸入・販売される加工食品はくるみの表示義務対象となります。

この他に、場合によっては健康被害につながる20種類のアレルゲン物質を定め、この20品目を『特定原材料に準ずるもの』としてできるだけ表示することを推奨しています。しかし、この20品目には表示義務はありません。

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

※なお、製品に上記の原材料が含まれていなかったとしても、同じ製造ラインで作られていた場合には、「アレルギー物質○○を含む製品と同一製造ラインで製造したものであること」といった表示を行うことが推奨されています。

〇原材料の区分保管

「アレルギー物質を含む原材料」と「含まない原材料」を取り間違えないためにも、スペースを区分し管理しましょう。ラベルなどを貼り、できるだけ容易に識別ができるように工夫することでリスクを大きく減少できます。

〇使用機具の区分

使用機具についても分類を行いましょう。同じ器具を2種類以上準備し、1つはアレルギーを含む原材料専用とし色分けやマーク表示などを行う。同じ器具で対応する場合は、アレルゲン物質が残存しないよう徹底的な洗浄は必要です。適切に洗浄できているか拭き取り検査を行い定期的に検証しましょう。

〇製造ラインの区分

アレルゲンを含む食品と、含まない食品を同一製造ラインで製造する場合は使用後に洗浄を徹底し、アレルギー物質が残らないよう注意します。ただし、食物アレルゲンは目視できないくらいの僅かな残留でも、深刻な食品事故を引き起こす場合があります。使用機具同様、適切に洗浄できているか拭き取り検査を行い、定期的に検証しましょう。

アレルギー症状を引き起こす物質であるアレルゲンは、微量でも死に至る可能性がある為、従事者の正しい知識が不可欠です。適切な管理を行い、安心して食を楽しめる環境をつくりましょう。